「家をお金に換える」住宅資産化ビジネスこそ、住宅会社の強みを生かせる活路である

「家をお金に換える」住宅資産化ビジネスこそ、住宅会社の強みを生かせる活路である
コラム「時流を読む」

日本人の個人資産の大半は「住宅」である

長寿化が進み、「人生100年時代」と言われるようになりました。寿命が伸びていることは喜ばしいことですが、一方で長い老後を生き抜くだけの資産をどうするかという問題が浮き彫りになっており、多くの人が老後資産の形成に不安を抱えています。

長いデフレの間に個人所得は少しずつ減少しました。日々の暮らしのなか、老後資金は後回しという場合も多いでしょう。また、日本人の個人資産のうち大半を占めるのは、預貯金や有価証券などの金融資産ではなく、「住宅・宅地」となっています。

私は、日本人のこれからの資産形成においては、「住宅の資産化」が大きなキーになるのではないかと考えています。

減価償却で棄損される「建物」の価値

その一方、日本では欧米のように自宅を投資対象として資産形成する文化が醸成されていません。建物価値が大幅に棄損してしまう減価償却の制度があり、資産価値が減少してしまうのです。
欧米と比較して国民資産の約500兆円が失われたと言われていることは、住宅業界の方なら多くの方がご存知なのではないでしょうか。

ただ、いまのインフレ下のなか新築信仰に陰りが見えてきました。住宅価格の上昇で新築に手が届かない層にとって、住宅購入検討はまず「質のいい中古住宅」からになりつつあり、中古住宅の価格は上昇を続けています。つまり、適切にメンテナンスされた中古住宅であれば住宅を資産化することが可能な時代へと変わってきたともいえます。

私は、ここに住宅会社の強みを生かすビジネスチャンスがあると考えます。

「住宅の資産化」ビジネスに活路

これまで中古住宅売買時に行うインスペクション(建物状況調査)がそれほど普及してこなかった理由のひとつに、第三者である調査員が事前に知りうる建物情報が少なすぎて、不具合を見つけることが困難であり、調査コストが大きすぎることがあります。

では、その建物状況を知っているのは誰なのか。
住み手である施主であると同時に、その家を建設した地域工務店やビルダーなど住宅会社ではないでしょうか。つまりこれから、顧客の資産となる建物価値を正確に理解できる存在として、住宅会社が関与できるのです。

施主も最初は売却など考えていなくとも、月日がたち老後を迎え、まとまった資金さえあれば高齢者施設に入りたいというようにニーズが変わらないとも限りません。
その時に、住宅会社が「家をお金に換える」相談相手として関係性が築けていることが重要です。施主に対して、適切なメンテナンスを継続することによって住宅の資産価値を維持し、自宅売却などによる資産化という方法があると提案し続けることが必要でしょう。
そして、具体的に売却を検討する段階には必要な改修を行い、少しでも高い値段で自宅をお金に戻すお手伝いをする。施主が毎月コツコツと住宅ローンを返済してきた自宅を、第二のお財布にして差し上げるのです。

「地域に根付く住宅建築のプロ」にしかできない業態転換を

またこの先、住宅会社が不動産仲介の窓口として売却を担うことができれば、建物の資産価値を反映した価格で住宅販売が可能です。施主にとって住まいの価値を理解している住宅会社が売却まで担当してくれ、住宅会社にとっては、メンテナンスや売却前の改修費用に加えて不動産仲介手数料が収益として見込める。

現在はインフレ下にあり、全国の中古住宅価格も上昇しています。こういった時こそ、中古住宅の売主の立場となる中古住宅売買事業はチャンスです。私はこの「住宅再生・流通ビルダー」こそが、住宅会社の強みを生かす、中古住宅ビジネスの姿ではないかと考えています。

関連記事

住宅会社にしかできない「住宅再生・流通ビルダー」への業態転換3ステップ
住宅会社にしかできない
「住宅再生・流通ビルダー」への業態転換3ステップ

サービス紹介
住宅再生・流通ビルダーとは、これまで建てた住まいを適切にメンテナンスし、高品質な中古住宅という付加価 …続きを読む


筆者

鵜澤 泰功 (Uzawa Yasunori)
林業、住宅シンクタンクなどを経験し、1996年に住宅コンサルティング会社を設立。その後住宅会社をより本質的に支援するため、MSJグループ各社を設立。