住宅はAmazon化できるか BIMが迫る建材流通革命

コラム「時流を読む」

BIMとは、3次元建築情報のデジタルモデル。住宅の設計・施工工程を効率化する革命的なツールとして、本コラムでも取り上げてきましたが、今回は視点を変えて、BIMがもたらす「情報の非対称性」の解消について考えます。

縦割りの業界構造が究極の情報格差を生む

住宅は、情報の非対称性が極めて高いブラックボックス商品です。設計・施工、建材・流通など多岐にわたる専門業種が存在し、業種ごとに異なるロジックと商習慣により動いており、情報は各所で分断されています。
業者同士ですら情報共有は極めて限定的。最終消費者に届く情報は、氷山の一角にも及びません。こうした構造が、住宅を「良し悪しの見えない商品」にしている最大の要因なのです。

BIMの真価は「膨大な情報の可視化」にあり

しかし、BIMはこの情報格差を埋める力を持っています。
BIMは単なる3Dモデリングにとどまらず、建材のひとつひとつをデジタルパーツ化し、仕様・寸法・原価までもデータ化して埋め込みます。「何円の金釘が、どこで何本必要なのか」といったレベルまで正確に情報を可視化し、ブラックボックスの極みである住宅においても、情報の非対称性を無くしてしまう。これがBIMの本質なのです。

BIMは工程毎に情報がレイヤー分けされており必要な部分だけ表示できる。また、すべての部材に情報が埋め込まれ、クリックし詳細を呼び出すことが可能

既得権益を揺るがす「建材流通革命」の実現へ

情報の非対称性は、情報優位にとっては好都合であり、しばしば既得権益の温床となってきました。
ムダ、中間マージン、形骸化した役割分担…。住宅産業はこうした既得権益というコストが膨れ上がり、限界を迎えています。この現実に、BIMはくさびを打ち込む存在です。消費者自身が、プレカット工場や建材メーカーに直接発注する——そんな中抜きモデルが、いよいよ現実味を帯びてきました。

Amazonが流通革命を起こしたように、住宅産業にも同じ風が吹き始めています。
決して簡単ではありませんが、BIMを活用した情報開示と流通の最適化こそ、住宅業界を根本から変える鍵になると、私は確信しています。


筆者

uzawaprofile
鵜澤 泰功 (Uzawa Yasunori)
林業、住宅シンクタンクなどを経験し、1996年に住宅コンサルティング会社を設立。その後住宅会社をより本質的に支援するため、MSJグループ各社を設立。