「行列のできる工務店」ほど悲惨に
約30年続いたデフレの時代が終わり、世界はインフレへと突入しました。これは歴史的転換に値し、これまでの様々な常識が通用しなくなることを意味しています。経営者は、頭をデフレ脳からインフレ脳へと切り替え、真逆の経営感覚を持つことが問われています。
これまでの注文住宅ビルダーの理想経営とは「行列のできる工務店」でした。受注済の案件が積み上がり、数年間は営業をしなくても仕事がある状態が理想とされました。
しかし今は真逆のことが起きています。例えば2年前に工事請負契約をした案件は、受注額を上げて契約書を巻き直さない限り、原価の高騰により赤字は確実。デフレでは理想だった行列が、インフレでは悪に変わるのです。
インフレの掟へのスピーディな対応がカギ
当然ビルダーの勝ち条件も大きく転換しています。一番の生命線は「粗利確保力」。仕入れ力を持ち、実行予算を正確に管理し、原価上昇分を価格転嫁できなければ、直ちに赤字になってしまいます。
ポテンシャルが高いエリアは、都心に比べて土地価格の安い遠郊外や、国内回帰を進めるメーカーなどの産業が集積する地方。新築戸建市場が伸びる可能性があります。
また、住宅引渡後も長期的に施主と関係を持ち、有償メンテナンスやリフォーム、自宅売却サポートなどを推進し、新築に偏らない事業多角化も重要です。
強い危機感を持って真逆の感覚を身に付ける
長年デフレ脳で生きてきた私たちにとって、インフレ脳へと転換することはたやすいことではありません。しかし何もしなければ、すぐに赤字へと転落し、現金・貯金の価値も目減りし、倒産の危機に陥ります。経営者は、今すぐに頭を切り替え、様々な防衛をしていかなくてはなりません。私はこのことが企業の生死を分けると、強い危機感を持っています。
鵜澤 泰功 (Uzawa Yasunori)
林業、住宅シンクタンクなどを経験し、1996年に住宅コンサルティング会社を設立。その後住宅会社をより本質的に支援するため、MSJグループ各社を設立。
林業、住宅シンクタンクなどを経験し、1996年に住宅コンサルティング会社を設立。その後住宅会社をより本質的に支援するため、MSJグループ各社を設立。