「夢のマイホーム」はもう売れない 住宅は「生活防衛商品」になった

コラム「時流を読む」

エンゲル係数28.5%が示す、家計の厳しさ

総務省から2024年の家計調査が公表され、エンゲル係数が43年ぶりの高水準となりました。

外食普及などの要因もあるものの、2015年以降日本だけが急伸する点は、家計の厳しさを年々感じている我々の肌感覚に近いと感じています。食費以外の支出を削らざるを得ないなかで、高価な住宅を購入できる層が一体どれほどいるのでしょうか。

一方で都心マンションだけは、投資マネーが流れ込み好調です。モノとお金を交換する実体経済より、モノを介さない金融経済の方がはるかに儲かり、一握りの人が富を独占するようになりました。まるで日本にふたつの世界が存在するかのように、実体経済と金融経済の格差が巨大化しています。

夢から現実へ。消費者心理の変化をつかめ

消費者の住宅購買力は、今後も低下し続けるでしょう。我々はこの残酷な現実を直視しなければなりません。

消費者心理は大きく変化しています。「この先どうなるか分からない」という不安、そして「リスクを避けたい」という防衛本能…。高価な「夢のマイホーム」では、これらのニーズに応えることは難しいでしょう。

「生活防衛」という視点で新たな商品開発を

いま消費者が求めるのは、リスクに備え生活を守る「生活防衛商品」としての住宅です。
厳しい家計のなかで住宅費用の負担をできるだけ抑え、長きにわたって安心して暮らせること。夢物語をつくるのではなく、現実に寄り添うことが、住宅会社には求められていると私は考えています。

もっとも、高価な住宅を買うのが難しいのであって、良質な住環境で暮らしたいというニーズは旺盛です。断熱・耐震改修を施した中古住宅、地方など土地が安いエリアの木造住宅などは、今後も成長が期待できる分野です。

MSJグループでも、金利上昇リスクがない固定金利型住宅ローンや、シニア向けのリバースモーゲージなどの提供を進め、住宅会社の支援に力を入れていきます。


筆者

uzawaprofile
鵜澤 泰功 (Uzawa Yasunori)
林業、住宅シンクタンクなどを経験し、1996年に住宅コンサルティング会社を設立。その後住宅会社をより本質的に支援するため、MSJグループ各社を設立。