建材流通停滞はなぜ起きたか
背景には、「請負モデル」の限界あり

建材流通停滞はなぜ起きたか 背景には、「請負モデル」の限界あり
コラム「時流を読む」

建材仕入れが出来ない?!与信問題の拡大

住宅建設における事業環境が大きく変化しています。

なかでも私は、与信問題の拡大を非常に深刻だと見ています。背景には、コストプッシュインフレや円安により建材価格が高騰していることや、住宅建設業の利益率が低下し、住宅会社の財務内容が急速に悪化していることが挙げられます。

住宅会社から「建材の仕入れがままならず、着工出来ない」という声がある一方、建材会社からも「売掛金回収リスクが高く取引に慎重にならざるを得ない」という声も聞かれ、業界全体に影響が及んでいます。

私は問題の根底には「請負モデル」による商慣習そのものの限界があると考えています。

様々な環境変化が住宅産業モデルの再定義を促している

「請負モデル」がつくった産業構造

実は、住宅会社が材料を仕入れ施工し完成の責を負う「請負モデル」が主流となったのは戦後で、戦前は材木屋が材料を手配し、大工は工事のみ行う「材工分離」が主流でした。

1949年、適正な施工や発注者保護を目的とした建設業法が施行され、現在の請負モデルへと舵が切られたのです。住宅会社にとっても材料仕入が利益確保の一つの手段となり、住宅産業を動かすエンジンとなりました。

住宅産業を再定義し新たなモデル構築急げ

しかし現在、請負モデルは新たな課題を浮き彫りにしています。

そもそもこれは、住宅会社の安定した与信を前提に成り立っており、仕入から入金までのリードタイムが長いゆえの回収リスクを、取引先の与信管理によりヘッジするため、コスト増につながりやすい側面があります。

それが現在、インフレによるコスト上昇により、顕著に利益が圧迫される事態につながり、住宅会社の財務内容が急速に悪化。請負モデルが限界を迎えてしまったと言えるでしょう。

問題解決のためには、請負モデルありきの常識にとらわれず、柔軟に再定義を行わなければなりません。適正な施工や発注者保護を大前提に、ICTや金融の最新技術も活用し、新たな産業モデルの構築すること急務だと私は考えています。

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筆者

鵜澤 泰功 (Uzawa Yasunori)
林業、住宅シンクタンクなどを経験し、1996年に住宅コンサルティング会社を設立。その後住宅会社をより本質的に支援するため、MSJグループ各社を設立。