中小企業は混乱期こそチャンス 戦後闇市経済と2023年との共通点

コラム「時流を読む」

不透明感が強まり、世界経済は混乱期へ

アメリカの消費者物価指数が急上昇しています。これは、1970年代の歴史的インフレに迫る水準です。

米国消費者物価指数の推移

当時はニクソン・ショックと呼ばれる経済政策の中で中東戦争が勃発し、オイル・ショックへとつながり、大きなインフレの山が3回起きました。
今回も同じように、インフレの山が複数回おきるのか、日本にどれほどの影響をもたらすかは分かりません。しかし、前回のコラムで触れた逆イールドしかり、非常に厳しい先行指標が出ていることは間違いありません。

弱い種が最も多く生き残るのは「中規模攪乱期」

今回は、生物学のある仮説をご紹介しましょう。
それは、生物学者コネルが提唱した「中規模攪乱(かくらん)仮説」。隕石衝突などによる環境変化が大規模な時期(攪乱期)は、ストレス耐性の高い種しか生き残れず生物の種類が減少し、安定期も競争的排除が起こるため、弱い種は淘汰される。
弱い種が一番多く生息できるのは、その中間の「中規模攪乱期である」という仮説です。

J.H.コネルが提唱「中規模攪乱仮説」

私は、経済においても同じ傾向があると考えています。例えば、大規模な攪乱期は太平洋戦争時代。安定期は、30年続いたデフレ時代にあたり、エリア拡大などによって同一商品を大量に売る事業が伸び、大手の寡占化が進みました。

戦後闇市経済も現在も有利なのは中小

中規模攪乱期の例としては、戦後闇市経済が挙げられるでしょう。柔軟性とハングリー精神を持った商売人が数多くいて、小ロットの商品や修理した中古品などを売っていた。
私は現在の経営環境も、中規模攪乱期にあると思っています。

産業に隙間が生まれるので、新規事業の立上げにはちょうど良い。しかし環境変化も激しいため、柔軟性があり小回りがきく中小企業に有利なのではないかと私は考えています。

2023年は、中小企業にとってチャンスであることを認識し、様々な環境変化を注視し、恐れず挑戦することが、次なる成長につながっていくのではないでしょうか。

筆者

鵜澤 泰功 (Uzawa Yasunori)
林業、住宅シンクタンクなどを経験し、1996年に住宅コンサルティング会社を設立。その後住宅会社をより本質的に支援するため、MSJグループ各社を設立。