点から面、競争から共生へ データが促す住宅産業の再定義とは

サービス導入事例

住宅産業は今、新築至上主義という制度疲労の極限にあり、大きな転換点にあります。産業を再定義する鍵を探るべく、地盤調査システム「GeoWeb System」などを開発する ジオサイン株式会社 代表取締役社長 成田芳文氏と、MSJグループ代表 鵜澤泰功が、住宅産業の未来ビジョンについて、データ活用やAIがもたらす変化という視点から対談しました。

再定義の切り口は、点から面、競争から共生へ

MSJグループ鵜澤 住宅産業は、低い利益率と制度疲労の極限にあり、脱却するには2つの切り口が重要だと考えています。一つは「点から面へ」。住宅データという「点」を「面」へつなぎ、ビッグデータ化して初めて真の価値が生まれるという考え方。

もう一つは「競争から共生へ」。人材不足や価格高騰などの深刻な課題は、もはや一企業では解決不能。複数の企業が非営利組織に参画し、共同で課題解決を図って成果をシェアすることで、生き残るという考え方です。

ジオサイン成田さん 仰る通りです。当社もデータを集める「点」の戦いから、地盤データを測量データなどとつなぐ「面」ソリューションの構築に舵を切っています。また昨年から、一般社団法人 住宅DX推進協議会(JDX)に当社も参画させていただき、成長機会も広がったと感じています。

鵜澤 御社にはJDXで「地盤DXマップ」を開発頂きましたね。本来競合する地盤保証各社が、自社の地盤情報を出し渋ることなく提供してくれたことは画期的でした。

 地盤DXマップ

複数の地盤関連会社のデータを統合し、130万件超の情報をひとつにまとめた「地盤DXマップ」は、地盤関連会社のみならず、住宅営業・設計の現場で地盤判断の効率化が進む実用ツールです。
100万件超の調査履歴をベースに半径2kmの近隣調査レポートを出力。営業時の周辺確認に活かせます。また、調査深度などのレイヤ表示により地盤の傾向を把握しやすくなり、事前検討の精度向上にもつながります。

 地盤DXマップについてはこちらの記事で詳しくご紹介しています

成田さん 鵜澤さんの求心力だと思いますよ。住宅瑕疵担保責任保険法人ハウスジーメンの力も大きいように感じます。

鵜澤 ある意味では必然なのかもしれません。DXというのは、点では意味をなさない。データをつなげて面にし、「質」に変えられてこそマネタイズができるのです。マネタイズの大前提として、圧倒的なデータ量が必要になりますから、企業の枠を超えて皆でデータを持ち寄るしかなかったのです。

地盤DXから住宅産業の全体最適へ。鍵は異業種連携

鵜澤 米国では、MLSに建物・土地・災害・所有者の所得などあらゆる情報が集約され、活発な中古住宅取引を支えています。MSJグループでもMLSをモデルに開発した「助っ人クラウド」があり、今後はJDXの地盤情報とも連携して中古住宅再販へつなぐ構想を持っている。実現すれば、住宅形成プロセスにおける地盤の重要性も高まると考えています。

成田さん 非常に重要な視点ですね。より幅広な情報を集めるという意味で、人流や水害データなどを持つ空間情報技術企業などにJDXに参画頂くのも良いかもしれません。

鵜澤 確かに、住宅産業の全体最適に発展させるためには、金融やIT企業の存在が鍵。ぜひ広げましょう。

成田 芳文 代表取締役社長(ジオサイン株式会社)

儲からないメンテを突破する、データ集約の力

鵜澤 新築至上主義も限界にあり、今後はメンテ事業に転換せざるを得ない。私はここに住宅産業が「情報産業」へ進化するチャンスがあると捉えています。メンテは単価が低いですが、耐用年数という予測可能な周期がある。各住宅の詳細情報を集約し、効率化に対応できれば、「メンテは儲からない」という壁を突破できるのではないかと。

成田さん 同感です。メンテ市場のポテンシャルは高い。やはり、情報を「点」から「面」に昇華させることが重要ですね。

知識爆発はいつか?フィジカルAIの衝撃

鵜澤 では次に、今後の経営環境を考えるうえで外せない「AI」について、IT分野に知見が深い成田さんに色々と伺いたいと思います。私は近々、AIが人間の知能を大幅に超えて自律し、社会に不可逆的かつ急激な変化をもたらす転換点「シンギュラリティ(知識爆発)」が起きるとふんでるんですが。

成田さん 知識爆発は目前に迫っていますよ。今、当社が参加している水路保全のための産学官連携PJTでは、フィジカルAIを使っており、そのもの凄い学習スピードには、私も驚いています。

鵜澤 そうなんですか。私は2028年頃かなと思っていたんですが、成田さんはもっと近い認識なんですね。もし知識爆発の時期を読み間違えれば、中小企業である我々は一瞬で吹き飛んでしまう。私にはそんな危機感があるのです。

鵜澤 泰功(MSJグループ 代表)

成田さん 私はむしろ早く知識爆発してくれないと、日本の建物やインフラはすべてダメになってしまうという危機感がありますね。特に電気、ガス、上下水道、通信といったインフラの分野は、深刻な人材不足でメンテナンスができない事態になっています。

でもAIエージェントは、データを解釈して創造し、測量の上手い下手がサービスの決め手というような、今までの在り方を凌駕していきます。ですから当社では、フィジカルAIを使用していち早く地図の3D化にも挑戦し、その先の検査やBIMとのプラグインも見据えています。

知識爆発は十分に味方にできると思っていて、当社はベンチャーとして非常に大きいチャンスだと捉えています。

 対談の後編はこちらから

特別対談(後半)|ジオサイン×MSJグループ
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