住宅産業のAI大革命 情報の非対称性・既得権なくし消費者主役へ

サービス導入事例

住宅産業は今、新築至上主義という制度疲労の極限にあり、大きな転換点にあります。産業を再定義する鍵を探るべく、地盤調査システム「GeoWeb System」などを開発する ジオサイン株式会社 代表取締役社長 成田芳文氏と、MSJグループ代表 鵜澤泰功が、住宅産業の未来ビジョンについて、データ活用やAIがもたらす変化という視点から対談しました。

AIは「情報の非対称性」と「中間」を無くす

MSJグループ鵜澤 私は中古住宅流通を阻んでいる「情報の非対称性」が、今後なくなっていくと考えています。今は、メンテをきちんと行い、インスペクション情報や地盤データもきちんと公開しても、結局は駅からの距離や築年数で価格が決まってしまう。

(右から)成田 芳文(ジオサイン株式会社 代表取締役社長)、鵜澤 泰功(MSJグループ 代表)

でも住宅のあらゆるデータを集約し完全開示すれば、良い物件ほど高く売れ、そうでない物件は低く評価されていくのではないかと。地盤DXマップの情報も、今まで見えなかった土の中の世界に、日があたっていく可能性がある。

ジオサイン成田さん データが多いほどAIフレンドリーですから、可能性は高いと思います。ところでMSJグループのビジネスは、法人向けの「B to B」モデルですよね。

鵜澤 はい。ですがAIエージェントを使って消費者に情報開示できれば、「B to B」企業も消費者に向き合えるようになるのではと。AIは設計や積算の自動化よりも、むしろマーケティングのパフォーマンス向上に向くと考えています。

成田さん 私もそう思います。AIは好みに合う物件を探して情報提示するなど、消費者向けの親和性が高い。その結果、様々な中間商流や業者が割愛されていくでしょう。測量しなくとも、街の3Dデータをトレースすれば済むといった可能性も出てきます。実際に当社では、それをクラウドで進めています。

鵜澤 ですが私は、参入が早過ぎてもコストが見合わず、命取りになるのではと懸念していまして。当社でも、3Dデータ(BIM)を扱い始めているんですが、とにかくデータが重くて。3Dデータが、通信速度やクラウドに耐え得る状況は生まれるんでしょうか。

成田さん いや、既に生まれていますよ!実際に当社では、既に3Dデータをクラウドに実装できています。この分野は中国が非常に進んでいて、ゲームAIベンダーを筆頭に、河川やダムなどのインフラも全てAIで管理しています。

成田 芳文 代表取締役社長(ジオサイン株式会社)

センサーで全ての動的データを取得し、設備一つひとつを撮影し分析してメンテナンスを行っていて、しかもコストは安い。日本は遅れているなと感じます。鵜澤さんも実際に中国の技術を見ると、きっと意識が変わると思います。

鵜澤 なるほど。皆で見に行った方がいいかもしれませんね。

AIが商習慣と既得権をディストラクションする

鵜澤 ただ実際には、商習慣を変え既得権を排除しなければ進みません。例えば、レインズがMLSのようにならない理由は、日本は顧客の利益相反になる「両手仲介」がまかり通っているからです。

成田さん 既得権という意味だと、不動産仲介市場だけではなく建築テック市場も、寡占化され保守的で既得権が存在します。

ベンチャーを含めて競争があるからこそ、市場が活性化する。必要なのは市場や既得権、商習慣のディストラクションという視点ではないでしょうか。やはりこれらを飛び越えないと、新しいビジネスは拓けないのかなと。JDXはそれができる組織だと思います。

鵜澤 私は、以前から不動産C to C取引の可能性を探ってきたのですが、AIはそれを可能にできると考えています。「点」情報をつなげて「面」にし、AIが米国のエージェントのように機能すれば、不動産売買の在り方を根本から変えることもできるのではないかと。

成田さん 日本もエージェント制に変わるべきですよね。様々なフローが割愛できそうです。

データの使い方次第ではないでしょうか。当社も地盤調査データを他のデータとつなげようとしているんですが、実際はところどころで途切れていて。それらをつなぐインターフェースをAIが担うようになると思っています。

市場の主役は消費者。B to Bモデルからの脱却と飛躍

鵜澤 問題はどういう手順でやるかです。MSJグループは、「住宅を建てるプロセス」に関してはノウハウがあるんですが、「中古住宅を売るプロセス」についてはないんですよ。

成田さん 私も同じですが、だからこそ「買い手側」に対して一気に拡大してしまえばいいのではないでしょうか。もし、AIエージェントが自分の住みたい家を探してくれて、インフラなどあらゆるデータが見られれば、消費者は価値を感じてくれると思いますよ。

鵜澤 確かにそうですね。

鵜澤 泰功(MSJグループ 代表)

成田さん 皆さん「売り手側」市場に一生懸命ですが、僕はそうじゃないと思っていて、買う側にフォーカスした方が、話が早いのではないかと。

既得権益と戦おうと思っても無理なんですよ。ポイントは、困っている「使う側」にOKを出させること。もしB to Bモデルのみなら顧客に言われたことだけやれば良いですが、消費者を交えるからスケールできるし、グローバルに展開できるのだと思います。

鵜澤 なるほど。B to BしかやってこなかったMSJグループの弱点ですね。

AIで超えるアライアンスの壁。住宅産業のデファクトを創る

鵜澤 最後に、「競争から共生へ」というアライアンスの重要性に改めて触れたいと思います。

成田さん AIは、アライアンスの壁を乗り越える力になります。情報資産が圧倒的に増えるほど「皆楽になるから提携しましょう、皆さんのデータも集約させて下さい」ということではないでしょうか。

鵜澤 「点」をつなげて「面」にして初めて価値創造ができる。それがネットワーク外部性にまで届き、これがなければ住宅事業はできないという「事実上の標準」までにしていくことが、我々の夢ですよね。

今日は、私が感じていた危機意識を、ここまで明確に共有頂けたことに驚いています。どうもありがとうございました。

成田さん こちらこそ、ありがとうございました。

(右から)成田 芳文(ジオサイン株式会社 代表取締役社長)、鵜澤 泰功(MSJグループ 代表)

会社情報

社名ジオサイン株式会社( ウェブサイト
所在地東京都千代田区
創業2008年1月
事業内容住宅地盤システムソリューション ほか