建築確認「構造改革」の必然——BIM・AIと共生で実現。産業の合理化エンジンへ

コラム「時流を読む」

法改正とエリア分断が促す
建築確認の転換点

2025年4月の法改正は、設計・確認申請業務を増大させ、今なお業界に大きな混乱をもたらしています。民間の確認検査機関は全国に約120存在し、それぞれが別々に業務を行う非効率な構造を抱えています。この分断構造が、法改正の負荷と人手不足により限界に達したと、私は見ています。

しかし今こそ、建築確認を業界のボトルネックから合理化のエンジンへと転換する好機。今回は、次に述べる二つの視点から、建築確認の未来ビジョンを示します。

BIMとAIが実現する
審査の画期的な合理化

BIMの真価は単なる三次元化でなく、正確な積算が出来ることにあり、施工やメンテナンスなど前後の工程をつなぐことにあります。

初期コストはかかりますが、基本モデルの部品パーツを作り込んでしまえば、邸別の設計は一部の変更で完結できます。同時に積算・構造計算とも連携し、加工図や施工図へも展開が容易です。

BIMデータは審査を通じ、後工程でも活用可能な構造・法規情報を内包し、サプライチェーン全体の合理化エンジンとなります。建築基準法との照合はAIにふさわしい領域。AI審査こそ、建築確認の画期的な合理化を可能にします。

非営利組織が牽引する
サプライチェーンの課題解決

建築確認での深刻な人材不足と高齢化、止まらない住宅価格高騰などの社会課題は、一営利団体では解決不可能です。企業の枠組みを超えた「非営利組織」による共生でなければ、課題の本質を解決することはできません。

MSJグループが参画する一般社団法人住宅DX推進協議会は、この共生原理を体現し、住宅サプライチェーン全体の合理化を目指して建築確認分野のDX化にも着目しています。

全国の確認検査機関が参画する非営利プラットフォームを構築し、申請を一元的に受け付け、最速で対応できる機関に手配し、BIMやAI活用による審査を行う―。これこそが、建築確認の未来の姿であると、私は確信しています。


筆者

uzawaprofile
鵜澤 泰功 (Uzawa Yasunori)
林業、住宅シンクタンクなどを経験し、1996年に住宅コンサルティング会社を設立。その後住宅会社をより本質的に支援するため、MSJグループ各社を設立。

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