「新しい材工分離」が解決の鍵 BIM、電子マネー、保証の活用で住宅建設業を持続

コラム「時流を読む」

前回、建材流通停滞が起きている背景に「請負モデルという商習慣の限界」があると考察しました。

今回は続きとして、私が考える問題解決の手法についてご説明します。

建材流通停滞を解決する「新しい材工分離モデル」

「新しい分離発注モデル」のゴールは、住宅会社の与信に関係なく建材がスムーズに流通すること。施主が建材を購入する分離発注を下敷きに、最新技術を組み合わせることで現代風にアレンジします。

消費者保護の目線を持ちつつ、建材・施工を発注できるスキームや、スムーズな納材・施工管理体制、適切な利益確保などの各要件については、BIMや金融サービスを使用することでクリアになります。具体的には次のとおりです。

BIM、電子マネー、クラウド、保証など使いこなす

BIM施主が建材を発注できるためには、設計の精度を上げることが必要です。そのために、BIMを使い、建材一つひとつをもデータ化し、建材ボリュームを正確に積算します
ステーブルコインなどの
電子マネー
納材・工事完了のタイミングで即時決済(入金)できる技術です。モノと決済のタイミングがずれるほど高まる与信リスクを最小化し、請求・支払の手間を大幅に削減し、効率化も実現します
クラウド納材・工事出来高を正確に管理し、適切に工事を行うために、情報管理を行います
完成保証・つなぎ融資などの
金融サービス
施主にかかる建物未完成などのリスクをなくし、消費者保護を行います

住宅建設業の持続と、消費者の住宅購入を促す

新しい材工分離モデルは、住宅会社にとって大きなメリットがあります。受注後の材料高騰リスクを負う必要がなくなり、適切に利益を確保でき、建材仕入れをしない分、資金繰りもスムーズになります。多層複雑な建材流通がシンプルになることで住宅建設コストも削減され、消費者の手に届く価格帯で住宅を販売できるようになるでしょう。今こそ産業一体となって取り組む必要があると、私は強く感じています。


筆者

鵜澤 泰功 (Uzawa Yasunori)
林業、住宅シンクタンクなどを経験し、1996年に住宅コンサルティング会社を設立。その後住宅会社をより本質的に支援するため、MSJグループ各社を設立。